ゴールキーパーはゴールを守るだけではない

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ゴールキーパーにとって最も基本であり、かつ最も重要な役割が「セービング」です。相手のシュートを防ぎ、チームを失点から救うというのは、まさにゴールキーパーの象徴的な仕事であり、その精度が勝敗を左右する場面も少なくありません。

単にボールを止める能力だけでなく、シュートへの反応速度、ポジショニング、身体の柔軟性や瞬発力など、多くの要素が複雑に関わり合っています。

セービングには、シュートの種類や位置によって様々な対応が求められます。至近距離からのシュートには素早い反応と体の強さ、ミドルレンジからの一撃には視野の確保と飛び出しの判断、ロングシュートには風や弾道を読む力が必要です。

また、近年では「ハンドリング」の質も重要視されており、ただ弾くのではなく、確実にキャッチすることや、安全な場所にボールをはじく技術も求められています。

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ゴールキーパーが担うもうひとつの重要な役割が「コーチング」です。サッカーの試合中、最も広い視野を持ち、ピッチ全体を俯瞰できるポジションにいるのがゴールキーパーであり、その立場から味方に指示を出すことが、現代のサッカーでは必要不可欠なスキルとされています。ただ声を出せば良いわけではなく、タイミング、的確さ、伝わりやすい言葉選びが求められます。

コーチングとは、主にディフェンスラインの統率やマークの受け渡し、セットプレー時のポジショニング指示などを含みます。とくにディフェンダーが背後に相手を背負っている場面では、ゴールキーパーの声が頼りとなります。視界の限られるDFにとって、「右にいる」「後ろが空いている」といった一言が、失点を防ぐ大きなきっかけになることも少なくありません。

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かつてのゴールキーパーは、「手で止める専門職」として位置づけられていましたが、現代サッカーではそれだけでは通用しません。「足元の技術」、つまりパスやトラップ、ビルドアップの能力が極めて重要視されるようになってきています。

最終ラインからの組み立てが主流となった今、ゴールキーパーの一手が攻撃の起点となる場面も増えており、もはやGKも“フィールドプレーヤーの一員”として見なされているのです。

まず基本となるのが正確なキックです。近距離へのショートパスから、サイドチェンジにつながるロングフィードまで、状況に応じてボールを蹴り分ける能力が求められます。

プレッシャーの中で慌てず、味方の足元に確実に届けるためには、ただの力任せではなく、視野、判断、技術のすべてが必要です。特に対戦相手がハイプレスを仕掛けてくるようなチームであれば、GKの足元の安定感がビルドアップの成否を大きく左右します。

トラップの技術も同様に重要です。DFからバックパスを受ける場面では、相手のプレッシャーを受けながらもボールを正確にコントロールし、次のプレーへと繋げる必要があります。

トラップのミスひとつで失点につながる可能性があるため、GKには高い集中力と判断力が求められます。また、右足・左足のどちらでも遜色なく処理できることが、よりプレッシャーのかかりにくい選択肢を持つことにつながります。